NISAの口座開設が完了し、いよいよ「商品(投資信託)を選ぼう!」と画面を開いたあなた。おそらく、投資信託の売れ筋ランキングを見て、次の2つの銘柄が圧倒的なトップ争いをしているのを目にしたはずです。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):通称「オルカン」
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):通称「S&P500」
「みんなが買っているこの2つ、名前は聞くけれど何が違うの?」
「結局、どっちを選んだ方がお金が増えるの?」
「いっそのこと、両方半分ずつ買ってもいいのかな?」
このように、最後の最後でどちらに満額を賭けるべきか迷ってしまい、注文ボタンを押せずにいる方は非常に多いです。
結論から言うと、どちらを選んでも「大正解」です。どちらも世界最高水準の優秀な商品ですが、あなたの「リスクに対する考え方」によって、どちらがより最適かが変わります。
この記事では、オルカンとS&P500の正体と中身の違い、過去の実績、そしてあなたがどちらを選ぶべきかの「明確な判断基準」をどこよりも分かりやすく解説します。
1. そもそも「オルカン」と「S&P500」の正体とは?
どちらを選ぶべきかを決める前に、まずはそれぞれの銘柄が「どのような詰め合わせ弁当なのか」を正しく理解しましょう。
どちらも、第3回で解説した「インデックスファンド(市場の平均点と同じ値動きを目指す、手数料が劇的に安い投資信託)」であるという点は共通しています。違うのは、「どこの国の、どんな企業を詰め合わせているか」という点です。
オルカン(全世界株式)の正体
オルカンは、一言でいうと「地球まるごと詰め合わせ弁当」です。
これ1本を購入するだけで、日本のような先進国から、インドやブラジルのような新興国まで、世界約47カ国・約3,000社もの超一流企業にバランスよく自動で分散投資ができます。
S&P500(米国株式)の正体
S&P500は、一言でいうと「アメリカの最強企業トップ500詰め合わせ弁当」です。
世界経済の中心であるアメリカの主要な大企業500社(アップル、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、エヌビディアなど、誰もが知るメガテック企業)に丸ごと投資をします。
2. 【徹底比較】オルカンとS&P500の「中身」と「違い」
「全世界」と「アメリカ一国」という違いがあることは分かりましたが、実は中身を細かく見ていくと、初心者の方が驚くような意外な事実が見えてきます。
両者の重要なデータを比較表にまとめました。
| 比較項目 | 全世界株式(オルカン) | 米国株式(S&P500) |
| 投資対象 | 世界約47カ国・約3,000社 | アメリカのトップ500社 |
| 国ごとの比率 | アメリカ:約60% 日本、イギリス、フランス、インド等:計約40% | アメリカ:100% |
| 主な組み入れ企業 | アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン、メタ など | アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン、メタ など(比率がより高い) |
| 手数料(信託報酬) | 年 0.05775% 以内(業界最安水準) | 年 0.09372% 以内(業界最安水準) |
| 期待できるリターン | マイルド(世界平均の成長) | 高め(アメリカ経済の強い成長) |
| リスク(値動きの幅) | S&P500に比べるとやや穏やか | オルカンに比べるとやや激しい |
この表を踏まえ、初心者が押さえるべき2つのポイントを解説します。
ポイント①:実は「オルカン」の6割はアメリカでできている
「アメリカだけに投資するのは怖いから、全世界に分散されているオルカンにしよう」と考える人は多いです。しかし実は、オルカンの投資先の約60%(半分以上)はアメリカの企業が占めています。
なぜなら、世界の株式市場において、アメリカ企業の価値(時価総額)が圧倒的に巨大だからです。そのため、オルカンを選んだとしても、実質的にはアメリカ経済の動向に大きく影響を受けるということを知っておきましょう。
ポイント②:買っている上位の企業は「ほぼ同じ」
オルカンでもS&P500でも、私たちが投資したお金の多くは、世界のトップを走るアメリカのメガテック企業(アップルやエヌビディアなど)の株の購入に充てられます。
違いは、「そのアメリカ最強企業たちに何%の割合でお金を投じるか」です。S&P500はアメリカ100%なのでメガテック企業の比率が高くなり、オルカンは他の国の企業も入る分、メガテック企業の比率が少し薄まる、というイメージです。
3. 全世界株式(オルカン)のメリット・デメリット
では、それぞれの特徴をさらに深掘りしていきましょう。まずはオルカンからです。
⭕ オルカンのメリット:自動で「主役」を入れ替えてくれる
オルカンの最大の強みは、「時代の変化に合わせて、国や企業の比率をプロが勝手に調整してくれる」点にあります。
今はアメリカが世界最強ですが、30年後、50年後には別の国(例えばインドや他の国)が世界を牛耳っているかもしれません。もしアメリカが衰退して別の国が台頭してきた場合、オルカンは自動的にアメリカの比率を下げ、新しく成長してきた国の比率を上げてくれます。
つまり、あなたが一度設定してしまえば、地球が滅びない限り、世界の経済成長のおいしいところを永久に自動でもらい続けることができるのです。これ以上の「ほったらかし」はありません。
❌ オルカンのデメリット:アメリカ単体の爆発力には劣る
過去十数年のように「アメリカの一強時代」が続いている期間は、アメリカ以外の国(成長が緩やかな日本やヨーロッパなど)が混ざっていることが、かえって足を引っ張る形になります。そのため、アメリカだけに絞って投資をしていた人に比べると、資産の増え方は少しマイルドになります。
4. 米国株式(S&P500)のメリット・デメリット
続いて、S&P500の特徴を見ていきましょう。
⭕ S&P500のメリット:圧倒的な過去の実績と高い成長力
S&P500の最大の強みは、「過去のデータにおいて、オルカンを上回る抜群の成績を残し続けてきた」という事実です。
アメリカは、人口が今でも増え続けている数少ない先進国であり、世界中から優秀な人材や資本が集まる仕組みが出来上がっています。アップルやグーグルのような、世界を変えるイノベーション企業が次々と生まれる国であるため、これまで長期的に右肩上がりで圧倒的な成長を遂げてきました。
「これからも世界経済のトップはアメリカであり続ける」と信じられる人にとっては、最も効率よく資産を増やせる可能性が高い、最強の選択肢です。
❌ S&P500のデメリット:アメリカと一蓮托生(カントリーリスク)
いくら最強のアメリカといえど、10年単位で株価が低迷する「暗黒の時代」が過去に何度もありました。もし今後、アメリカの覇権が終わり、経済的な大暴落や長期の不況が訪れた場合、投資先をアメリカ1国に絞っているS&P500は、そのダメージを100%ダイレクトに受けることになります。
5. 【結論】あなたはどっち?迷わないための「3つの判断基準」
特徴は分かったけれど、やっぱり決められない……というあなたのために、あなたがどちらを選ぶべきか、スパッと白黒つける判断基準を用意しました。
基準①:「オルカン」を選ぶべき人
- 投資に対して「とにかく安心感・安全度」を最優先したい人
- 20年、30年、40年といった、超・長期でほったらかしにする予定の人
- 将来、アメリカ以外の国が台頭してきたときに、自分で銘柄を乗り換えるのが面倒な人
「先のことは誰にも分からないから、地球全体に賭けるのが一番合理的だ」と思える性格の人は、迷わずオルカンにしましょう。精神的な安定感は抜群です。
基準②:「S&P500」を選ぶべき人
- 少し値動きが激しくても、過去の実績通り「より高いリターン」を狙いたい人
- 「自分が生きている間(今後10〜20年程度)は、アメリカの覇権は揺るがない」と思える人
- 身の回りの製品(iPhone、Amazon、YouTube、Windows等)を見て、アメリカ企業の強さを実感している人
「世界を引っ張っているのは結局アメリカの企業だし、これからもそうだ」と割り切れる人は、S&P500が向いています。資産の増えるスピードに期待が持てます。
基準③:【よくある疑問】「両方半分ずつ買う」のはアリ?
悩んだ結果、「じゃあ、オルカンに毎月1万5,000円、S&P500に毎月1万5,000円、合計3万円買えば解決!」と考える初心者の方が非常に多いですが、これはあまりおすすめしません。
なぜなら、前述の通りオルカンの6割はすでにアメリカなので、両方を半分ずつ買うと、中身は「アメリカの比率が8割になった、中途半端な全世界株式」になるだけだからです。
管理する口座の画面に見覚えのある似たような商品が2つ並ぶことになり、成績の管理がややこしくなるだけですので、「どちらか1つに絞って、すっきり一本化して買い付ける」のがスマートです。
6. 初心者がやってはいけない!NISAの銘柄選び「3つのNG行動」
最後に、オルカンやS&P500を選ぶ際に、初心者が陥りがちな失敗パターンを3つご紹介します。これだけは絶対に避けてください。
NG①:「分配金(毎月お金がもらえる)」がある投資信託を選ぶ
投資信託の中には、持っているだけで毎月「分配金」としてお小遣いのような現金が振り込まれるタイプの商品があります。一見お得に見えますが、資産形成の段階では絶対に選んではいけません。
分配金を出してしまうと、その分、投資信託の中身のお金が減ってしまい、第1回でお話しした「雪だるまのようにお金が増える複利効果」が完全に途切れてしまいます。NISAでは、分配金を出さずに中で自動的に再投資してくれる商品(eMAXIS Slimなど)を選ぶのが鉄則です。
NG②:名前が似ている「手数料が高い商品」を間違えて買う
銀行の窓口や、ネット証券の検索画面で、例えば「〇〇・米国株式ファンド」といった、S&P500に似た名前の商品がたくさん出てきます。
中身は同じアメリカ株なのに、信託報酬(手数料)が年1.5%など、王道商品の20倍以上高く設定されている「罠のような類似商品」が存在します。必ず、信託報酬が「年0.1%以下」に抑えられている「eMAXIS Slim」などの超低コストシリーズであることを確認して購入してください。
NG③:「レバレッジ型」や「テーマ型」にいきなり手を出す
「AI関連株ファンド」「ロボット産業ファンド」といった流行りのテーマ型の商品や、値動きが通常の2倍・3倍になる「レバレッジ型(レバナスなど)」という商品があります。
これらは一時的に大儲けできる可能性がありますが、値下がりのスピードも尋常ではなく、長期の積立投資には全く向いていません。初心者であれば、流行り廃りのない、市場全体を買う王道のオルカンかS&P500だけで運用するのが最も安全です。
7. まとめ:どちらを選んでも大正解!自信を持って設定しよう
今回は、NISAで最も人気のある2大銘柄「オルカン」と「S&P500」の違いと選び方について解説しました。
- オルカン: 地球全体への究極の分散投資。30年以上の超長期や、絶対的な安心感が欲しい人向け。
- S&P500: 世界最強のアメリカ企業500社への集中投資。高い成長力とリターンを期待したい人向け。
- 注意点: どちらも優秀なので、両方半分ずつ買う必要はない。どちらか一方に絞るのが正解。
「オルカンにしておけば、S&P500が上がったときに悔しいかもしれない……」
「S&P500にしておけば、アメリカが大不況になったときに怖い……」
そうやって悩む気持ちはとてもよく分かります。しかし、「どちらを選んでも、過去の日本の銀行預金とは比べ物にならないほど優秀な資産形成ができる」ということは間違いありません。
どうしても決められないなら、まずはより守りの硬い「オルカン(全世界株式)」からスタートすることをおすすめします。一度積立を始めて、投資に慣れてきてから金額の配分を考えることも可能です。まずは自信を持って、どちらか一本の積立設定を完了させてみましょう!
次回予告
買うべき商品が決まったら、次に気になるのは「お金」のことです。
次回(第7回)は、「NISAは毎月いくらから始めるべき?平均額や少額投資(1,000円)の複利効果」をお届けします。
「みんな毎月いくら積み立てているの?」「月数千円じゃ意味ないって本当?」という疑問に対し、実際のシミュレーションを交えながら、あなたにとっての「最適な投資金額」のハ弾基準を分かりやすく解説します。お楽しみに!