NISAに興味を持ちつつも、最後の最後で踏み出せない人の多くが抱いているのが、「投資=大損して借金を抱えそう」「元本割れするのが怖い」という漠然とした不安です。
「もし数年後にリーマンショックやコロナショックのような大暴落が来たら、自分のお金はどうなってしまうの?」 「株価が暴落したニュースを見たら、パニックになって売ってしまうかも……」
結論からお伝えすると、NISAで投資信託(オルカンやS&P500など)を買っている限り、借金を背負うようなことは100%ありません。
しかし、投資である以上、一時的に資産が減ってしまう「元本割れ」の時期は必ず訪れます。大切なのは、暴落が起きたときに「絶対にやってはいけないNG行動」を知っておくことです。
この記事では、投資における「リスク」と「元本割れ」の正しい意味、暴落が起きても長期投資なら怖くない理由、そして暴落時に資産を守り抜くための鉄則を徹底解説します。
1. NISAの「リスク」と「元本割れ」の本当の意味
まずは、多くの人が誤解している「リスク」という言葉の本当の意味と、元本割れの仕組みを正しく理解しておきましょう。
投資における「リスク」とは「危険」ではなく「振り幅」のこと
日常会話で「リスクがある」というと、「危険だ」「損をする」という意味で使われます。 しかし、金融の世界で使われる「リスク」とは、危険のことではなく「リターン(収益)の振れ幅(ブレ)」のことを指します。
- リスクが小さい(預金など): 増えもしないが、減りもしない(振れ幅が狭い)
- リスクが大きい(株式など): 上に大きく増える可能性もあるが、下に減る可能性もある(振れ幅が広い)
NISAで投資信託を買うということは、この「振れ幅がある商品」にお金を託すということです。したがって、買った翌日に資産が増えることもあれば、一時的に評価額が下がってしまうこともあるのが当たり前なのです。
「元本割れ」とはどういう状態?
元本割れ(がんぽんわれ)とは、「自分が投資した合計金額(元本)よりも、現在の資産価値(評価額)が下回っている状態」のことです。
【例】 毎月1万円ずつ、10ヶ月間で合計「10万円」を投資したとします。 このとき、一時的な景気後退で資産の価値が「8万円」に落ち込んだ状態を「元本割れ」と呼びます。
ここで非常に重要なポイントがあります。それは、「元本割れ=損が確定したわけではない」ということです。 画面上で「8万円」と表示されていても、それはあくまで「今すぐ売却したら8万円になる」という一時的な評価額に過ぎません。売却せずに保有し続けていれば、経済の回復とともに価値が10万円、12万円と戻っていく可能性が十分にあります。
2. なぜ長期投資(15年〜20年)なら元本割れしにくくなるのか?
「一時的に下がるのは分かったけれど、そのまま戻ってこなかったらどうするの?」と不安になりますよね。
実は、過去数十年の世界経済のデータを分析すると、「長期で積立投資を続ければ、元本割れする確率は限りなくゼロに近づく」という明確な事実が分かっています。
【データが証明】15年〜20年以上保有すると、過去データでは元本割れゼロ
金融庁が公表しているデータや、アメリカの株式市場(S&P500など)の過去約100年の歴史を振り返ると、非常に興味深い傾向があります。
- 保有期間が「5年」の場合: 投資を始めた時期によっては、運用成果がマイナス(元本割れ)で終わってしまうケースが一定確率で発生します。
- 保有期間が「15年〜20年以上」の場合: 過去のどのタイミングで投資をスタートしたとしても(たとえバブルのピークや暴落の直前に始めていたとしても)、20年持ち続けた場合の運用成績はすべてプラス(元本割れゼロ)に収束しているのです。
つまり、NISAで資産形成を成功させる最大のコツは、難しい相場予測をすることではなく、「何があっても15年〜20年以上、市場に居居続けること」なのです。
「ドル・コスト平均法」が暴落時に威力を発揮する
毎月決まった金額を積み立てる手法を「ドル・コスト平均法」と呼びます。この手法を使っていると、暴落が起きたときにむしろ大きなメリットが生まれます。
【例】毎月1万円で「1個の価値」が変わる投資信託を買う場合
- 株価が高いとき(1個1,000円): 1万円で 10個 しか買えない
- 暴落して安いとき(1個500円): 1万円で 20個 も買える!
価格が下落している期間は、「同じ1万円でたくさんの量を安く仕仕込める絶好のバーゲンセール期間」になります。 その後、景気が回復して価格が元に戻ったとき、暴落中に安く買い溜めた大量の商品が一気に利益を生み出すため、結果として一括で買った人よりも早く資産が大きく膨らむのです。
3. 株価が暴落したときに「やってはいけないNG行動」3選
どんなに頭では理解していても、実際に暴落が起きて口座の資産が「100万円 → 70万円」に激減すると、人は強い恐怖を感じます。
過去にNISAで失敗して撤退してしまった初心者の100%が、暴落時に以下の「3つのNG行動」をとってしまっています。これだけは絶対にやらないと心に誓ってください。
NG行動①:恐怖に負けて資産を「売却(損切り)」してしまう
暴落時にやるべきことの正反対であり、最大の失敗原因が「怖くなって売ってしまうこと」です。
「これ以上損が膨らむ前に、残った70万円だけでも現金に戻したい!」という心理(パニック売り)が働き、売却ボタンを押してしまいます。 売却した瞬間に「30万円の損失」が現実のものとして確定し、一生損を取り戻せなくなります。暴落時の売却は、自ら負けを確定させる行為だと知ってください。
NG行動②:積立を「ストップ(停止)」してしまう
売却まではしなくても、「怖くなったから、株価が落ち着くまで毎月の積立を一時ストップしよう」と判断する人も多くいます。これも大きな間違いです。
先ほど解説した通り、暴落時こそが「将来大きく増えるための商品を安く買い集める最大のチャンス(バーゲンセール)」です。その絶好の買い場に積立を止めてしまうと、ドル・コスト平均法の最大の強みを自ら捨ててしまうことになります。
NG行動③:ニュースやSNSを見続けて、毎日口座画面をチェックする
暴落が起きると、テレビやネットニュースでは「世界恐慌の再来!」「株式市場崩壊」といったセンセーショナルで恐怖を煽る言葉が飛び交います。SNSでも「もう終わりだ」という悲観的なコメントで溢れかえります。
気になって毎日何度も証券会社のログイン画面を開き、減っていく数字を見つめていると、精神的に耐えられなくなり、最終的に「NG行動①(パニック売り)」へと追い込まれてしまいます。
4. 暴落が起きたときの「正解の立ち回り」とマインドセット
では、実際にニュースで「株価が大暴落!」と騒がれ、自分のNISA口座が大幅な元本割れを起こしたとき、私たちはどう行動すればいいのでしょうか?
正解は、拍子抜けするほどシンプルです。
【暴落時の正しい立ち回り】
何もしない。存在を忘れて、淡々と積立を継続する(ほったらかす)
立ち回り①:証券会社の画面を一切開かない(アプリを消す勢いでOK)
暴落が起きたら、最も効果的な対策は「証券会社のログイン画面を見ないこと」です。
数字を見るから心が揺れるのです。つみたて投資枠で毎月自動引き落としの設定をしてあるのであれば、あなたが画面を開こうが開くまいが、システムが勝手に淡々と安い価格で商品を買い続けてくれます。
「自分は今、未来のためのバーゲンセールに参加しているんだ」と割り切り、趣味や仕事、家族との時間に集中しましょう。
立ち回り②:過去の「大暴落の歴史」を思い出す
株式市場の歴史は、暴落と回復の繰り返しです。
- 2008年:リーマンショック(株価が約50%以上大暴落)
- 2020年:コロナショック(わずか1ヶ月で株価が約30%急落)
どちらの暴落のときも「もう世界経済は終わりだ」と言われました。しかし、過去の全ての暴落において、数年後には暴落前の高値をあっさりと更新し、最高値を更新し続けてきたという歴史があります。
「一時的に下がることはあっても、世界全体が成長し続ける限り、いつか必ず戻ってくる」という歴史の事実を信じることが大切です。
5. 暴落に負けないための「リスク管理(事前準備)」
暴落が来たときに動揺しないためには、始める前(または現在)の事前準備が不可欠です。自分がパニックにならないための2つの防波堤を作っておきましょう。
防波堤①:「生活防衛資金(現金)」をしっかり残しておく
第7回でもお伝えしましたが、生活費(半年〜1年分)は必ず銀行の普通預金(現金)として確保しておきましょう。
手元の現金がゼロの状態で全財産をNISAに投じていると、暴落が来たときに「明日の生活費がないから、損をしてでもNISAを売るしかない」という最悪の状況に追い込まれます。 「銀行に十分な現金があるから、NISAの画面がマイナスになっていても日常の生活には1ミリも支障がない」という心の余裕こそが、暴落を耐え抜く最大の盾になります。
防波堤②:無理のない「リスク許容度」で運用する
リスク許容度とは、「自分がどれくらいの損失(値下がり)までなら夜ぐっすり眠れるか」という精神的な耐性のことです。
もし、毎月の積立額が大きすぎて、少しの値下がりで胃が痛くなったり、仕事に集中できなくなったりする場合は、あなたの「リスク許容度」を超えて無理をしているサインです。その場合は、毎月の積立額を半分に減らすなどして、心が穏やかでいられる金額に調整しましょう。
6. まとめ:暴落は「恐怖」ではなく「資産を増やすチャンス」!
今回は、NISAにおける「リスク」と「元本割れ」、そして暴落時の正しい対処法について解説しました。
重要ポイントのおさらいです。
- 投資におけるリスクは「危険」ではなく「価格の振れ幅」のこと
- 15年〜20年の長期で運用すれば、過去のデータでは元本割れの確率はほぼゼロ
- 暴落時にやってはいけない最大の失敗は「怖くなって売ること」と「積立を止めること」
- 暴落が来たら「絶好のバーゲンセール」と思って、画面を見ずにほったらかすのが正解
投資を続けていれば、5年に1度、10年に1度くらいのペースで必ず大きな暴落がやってきます。 しかし、その暴落こそが、将来あなたに大きな資産をもたらしてくれる「恵みの雨」になります。
暴落の仕組みと正しい対処法を知ったあなたなら、もう暴落を恐れる必要はありません。じっくりと構えて、未来の豊かな生活のために淡々と積立を続けていきましょう!
次回予告
NISAの基本や運用ノウハウが身についたら、よく比較される「もう一つの非課税制度」についても知っておきましょう。
次回(第9回)は、「NISAとiDeCo(イデコ)の違いを比較!どっちを優先すべき?併用はできる?」をお届けします。
「税金が安くなる点ではiDeCoも凄そうだけど、NISAと何が違うの?」「自分はどちらから始めるべき?」という疑問をすっきり解消します。お楽しみに!